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 天平堂

絵唐津草花文輪花皿(桃山~江戸初期)

御売却済

大らかで優しい品位に満ちた絵唐津を代表する名品です。1978(昭和53)年に佐賀県立博物館で展観された出陳作品で、造形、絵付け、焼き上がり、状態、全てにおいて非の打ち所がありません。これまでに古唐津を超える焼物が造れない背景には歴史の重みに加え、桃山時代の陶工達が心に抱く、自然への畏敬の念、無心の境地、小手先ではなく、作陶に命を懸けて臨む精神性が極めて優れていたのだと思います。

商品コード
231214-4
時代
桃山~江戸初期
16世紀末期~17世紀初期
重量
336g
口径
16.8cm
高さ
4.5cm
底径
5.2cm
次第
御物袋
桐箱を作成
来歴
「古唐津‐肥前陶器の歴史と美を探る‐」、佐賀県立博物館、名32、所載品
状態
縁に僅かな削げがあります。

抜群の土味と肌合い、伝世の良好な状態を保っています。縁に僅かな削げがありますが、完品(無傷)の範疇です。

Photo Gallery

年表(桃山~江戸時代)


日本の焼物に筆で文様が描かれるようになるのは桃山時代からで、
志野焼と唐津焼はその代表格です。
鉄釉をたっぷりと含ませた筆で草花文が軽妙に描かれ、
郷愁を誘うような心温まる風情が感じられます。
良く溶けた長石釉が明るい鼠色を呈しています。

絵唐津草花文輪花皿(桃山~江戸初期)-1

轆轤成形で円形とし、
牛箆(牛の舌のような箆)で二段に成形します。
四方の口縁には筋文が描かれており、
還元焔による高温焼成の為、
にじんだ鉄釉が赤褐色の美しい発色を見せます。

絵唐津草花文輪花皿(桃山~江戸初期)-2

胎土の柔らかい間に指で四箇所を内側にへこませており、
一本と二本の指跡を残します。
深い見込みは平茶碗に見立てる事もできます。

絵唐津草花文輪花皿(桃山~江戸初期)-3

古唐津で最も注視されるのが土味です。
これ以上は望めない見事な伝世の土味に縮緬皺が生じています。

絵唐津草花文輪花皿(桃山~江戸初期)-4


古唐津

唐津焼とは肥前国唐津藩を中心とした肥前地方で焼成された陶器です。
名称は唐津港から積み出しされた事に由来しており、
「一樂、二萩、三唐津」と謳われるように茶陶としても高い評価を受けています。
16世紀末期に佐賀県北部の唐津市北波多地区で、
岸岳城主・波多三河守親が朝鮮から陶工を召致して開窯したと推測されており、
この岸岳城下には唐津焼草創期の古窯跡が点在しています。
1593(文禄2)年に波多氏が豊臣秀吉の勘気に触れて改易されると、
岸岳陶工達は肥前各地に離散し(岸岳崩れ)、
寺沢志摩守広高が入封して肥前国唐津藩が成立しました。
波多氏改易と岸岳諸窯の廃業は、
1593(文禄2)年以前から古唐津が焼成されていた根拠の一つであり、
唐津焼創始については発掘調査や研究から天正年間(1573~92)頃と推測されています。
文禄・慶長の役(1592~98)で召致されてきた渡来陶工により、
桃山~江戸初期に素朴で優れた作品を多く焼成した隆盛期を迎える事になります。
文禄の役で豊臣秀吉が名護屋城に滞陣した際、
古田織部も1592(文禄元)年から約一年半滞在し、
唐津諸窯を直接指導した事が指摘されています。
又、連房式登窯も唐津から美濃に伝わって久尻元屋敷に築窯されており、
朝鮮からの技術導入が日本の窯業に齎した功績は計り知れません。
唐津焼の登場は「織部茶会記」に「唐津焼皿」という名称で1602(慶長7)年に初出し、
慶長年間(1596~1615)に集中して現れています。
17世紀中頃には「古唐津」という表記が茶会記で既に使用されています。
唐津焼はその殆どが一般庶民の日用品として量産された物ですが、
点茶が流行した桃山~江戸初期頃には茶人間の眼に留まって茶陶に見立てられました。
中には茶人や茶道具商による注文品もあり、
全体的な総数からすると極めて少ない事から特に高い評価を受けています。
17世紀に入ると唐津焼にとって大きな事件が生じる事になります。
渡来陶工・李参平(和名:金ヶ江三兵衛)による泉山陶石の発見と磁器焼成の成功です。
伊万里焼の生産拡大は唐津焼衰退に大きな影響を与えました。
江戸前期には三島唐津や二彩唐津に特色が見られるもの古唐津程の魅力は失われ、
以後は僅かに御用窯(御茶碗窯)が残るだけとなりました。
昭和初期頃に古唐津研究家の金原京一(陶片)氏、水町和三郎氏、古舘九一氏は、
肥前一帯の唐津古窯跡を次々と発掘して何万点という貴重な陶片資料を提供しました。
飾らぬ土味と郷愁を誘う豊かな色合いは朗らかさや健やかさに満ちており、
土と炎により生み出された芸術の真髄です。


使い込む程に表情を変えていく古唐津

古唐津は茶渋や水分が染み込んで行きながら景色やしっとりとした味わいを身に付けます。
「造り手八分、使い手二分」と云われるように、
使用する事で器の成長を楽しむ事ができるのも醍醐味の一つです。
焼けが甘い(釉薬が焼成時間内に十分に溶け切れていない)作品はその傾向が更に増し、
雨漏り等はその存在感をいっそう高めます。