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 天平堂
太宰府天満宮様の梅を以て

太宰府天満宮様の梅を以て

2022年2月10日

古の時代、九州を統括する政庁として「西の都」の役割を担った大宰府。この度、第40代宮司・西高辻信宏様のご厚情により、太宰府天満宮様の梅を以て、花人・横川志歩先生に活けて頂くという、またとないご縁に恵まれました。ご尽力賜りました皆様に、心より深く御礼申し上げます。美術商として、自ら選定した花器を、これ以上ない形で引き立てて頂けました事、誠に恐悦至極に存じます。


太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-1

ウェルカムドリンクには、太宰府天満宮様の御神酒でもある梅酒をご用意致しました。境内にて丁寧に収穫された梅を用いて醸された一杯です。


室礼のお軸は白隠慧鶴の渡唐天神画讃 「袖にもちたる 梅にても知れ」

画は菅公の衣が「南無天満大自在天神」という名号の文字絵になっています。「渡唐(宋)天神」は、室町時代(1338–1573)に日本で生まれた説話です。菅原道真公(845–903)が夢の中で中国宋代の禅僧・無準師範(1177–1249)に参じ、一夜にして印可を受け、梅の一枝を携えて日本へ戻ったと伝えられています。本図では、菅公の衣が「南無天満大自在天神」の名号によって描かれた文字絵となっており、信仰と芸術が一体となった象徴的な表現が見られます。

太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-2

お菓子は太宰府天満宮様の御用達として知られる梅園さんによる御製。神が降り立つ山として古来より信仰を集め、中世には修験の地ともなった霊峰・宝満山。毎年五月、麓の池で生まれた体長1cmにも満たないヒキガエルの子たちが、約一ヶ月をかけて標高829メートルの山頂を目指します。人の尺度に喩えれば、エベレスト五座を積み重ねたほどの高さ。この神秘的な営みは、宝満山以外では確認されておらず、太宰府市の市民遺産にも認定されています。その愛らしい姿を「令和の翠」に焼印で捺し、霊峰・宝満山を「よろつよ」の意匠に託しました。幾多の試練を乗り越え、ただひたすらに頂を目指すその姿は、受験や就職、資格取得など、人生の節目に向かって努力を重ねる人々の姿と重なります。そして、無事に目標を成し遂げ、“かえる”という願いを込めて、「かえるばこ」と命名されました。

太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-3

風を司る風神は、
邪を祓い、
風の災いを鎮め、
五穀豊穣と福徳をもたらす守護神。

太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-4
太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-5

雷と水を司る雷神は、
雷の御神威によって厄を祓い、
雷電や火難を鎮め、
五穀豊穣と福徳を授ける守護神。

悪疫退散への祈りを込め、梅の趣向に呼応する形で、
風神には「東風」を、雷神には「天神様」を掛け合わせました。

乾山写風神雷神茶碗(16代 永樂善五郎)


太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-6

花:白梅、蕗の薹
器:倣大宋龍泉東青(河井寛次郎)

花入は河井寛次郎先生の鐘渓窯における青磁。
中国古典に倣った技巧的で精妙な作行は龍泉窯の名品にも迫る風格があり、
天神様の御神気を宿す立春の香り高い白梅を、
凛とした佇まいで力強く受け止めてくれました。


内覧会には、ゴールボール女子日本代表の浦田理恵選手にもご来場賜りました。
2012年ロンドン大会の金メダル、そして2021年東京大会の銅メダルを携え、
横川志歩先生とのひと時をお過ごし下さいました。

太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-7


横川志歩 先生

東京都生まれ。
2005(平成17)年より花人・川瀬敏郎氏に師事。
以来、全国各地にて「なげいれ 花の教室」を開講し、花を通じて日本の美と心を伝えている。

太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-8
太宰府天満宮様の梅を以て(横川志歩 先生)-9