Special Preview先行紹介
風格と貫禄を持ち合わせた美しい翠色の高麗青磁盞です。 口縁に雷文、胴部の4箇所に白黒象嵌で菊文が配されています。 裾部には網状氷裂が見られ、高台底に硅石目が3つ残っています。 上質の牙蓋が調製され、仕覆、黒柿を伴った杉箱と次第も整っている事から茶道具として大切に受け継がれてきた様子が窺えます。
- 時代
- 高麗時代
12~13世紀
- 重量
- 165g
- 胴径
- 8.3cm
- 口径
- 6.9cm
- 高さ
- 5.4cm
- 底径
- 4.0cm
- 次第
- 牙蓋
時代箱(杉箱)
- 状態
- 完品
口縁に窯疵があります
洗練された造形、美しい翠色、秀抜な焼き上がりと優品の条件を満たしています。
高麗青磁
高麗青磁とは高麗時代(918~1392)を中心に朝鮮半島で焼成された青磁です。
「雨過天晴」に喩えられる高雅で深みのある色調は中国・宋時代の青磁と並んで最高の位置付けにあります。
発生の諸説は様々にあって定説はありませんが、
統一新羅時代から続く内在的発展と、
越州窯青磁を始めとする中国陶磁の影響下に成立したとするのは共通する見解です。
全羅南道康津郡付近の150余個所に及ぶ窯跡では、
初期から末期に至るまでの青磁の変遷過程を連続的に辿る事ができます。
その中でも最も古いと思われているものが全羅南道康津郡大口面竜雲里窯等で、
越州窯青磁と類似したものが大量に発見されています。
11世紀は越州窯の他に汝窯や定窯等、中国陶磁の新技術が積極的に採り入れられました。
様々な装飾技法の模作が行われて陶磁発展の基礎を固めた時期と推測されています。
12世紀は高麗青磁の最盛期で独自の美的世界が築き上げられ、
他の装飾技法を凌駕する白黒象嵌青磁も施文技法の主体となります。
文様は明確に表現されるようになり、蒲柳水禽文や雲鶴文等の主題が顕在化します。
12~13世紀にかけては鉄絵、白泥彩、辰砂、鉄地、練り上げ、金彩等の技法が用いられ、
1231年以来は蒙古軍の侵入が相次いで苦難の時期を迎えますが、
青磁は14世紀末までに大量に生産されています。
1392年に始まる李朝において象嵌青磁は著しく退化した三島へと転化しました。