清閑な趣に大らかな品位が漂う李朝三島鉢です。釉色は淡緑灰色で胎土は茶褐色を呈し、端反りの口縁はシャープで厳しい造りとなっています。全面を覆う白象嵌が丁寧に施されており、簡単なようにも見える象嵌は非常に手間暇の掛かる技法で、量産が難しかった事も後の消滅の理由の一つと推測されています。やや大きな寸法となりますが、茶碗としての見立ても可能です。
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- 商品コード
- 240420-1-1
- 時代
- 朝鮮時代
15~16世紀
- 重量
- 440g
- 口径
- 15.8×15.5cm
- 高さ
- 7.6cm
- 底径
- 5.9cm
- 次第
- 桐箱
- 状態
- 口縁に小さな金直しが2箇所あります
やや青みを帯びた柔らかな釉調が美しく、良好な状態を保っています。
三島
三島とは象嵌文様のある粉青沙器です。
「三島」という名称の由来には、
象嵌文様が三嶋大社(静岡県)の三嶋暦の字配りに似る事に因んで名付けたとの説が有力で、
三島(現:巨文島)を経由して請来された事に因んで名付けたとする説も知られています。
高麗時代に隆盛した象嵌青磁が徐々に衰退し、
1392年に李成桂が李氏朝鮮を建国した後の新時代を反映するかのように、
15世紀に象嵌技法を駆使した作風に転化しました。
素地が生乾きの軟らかい間に陰刻や印花で文様を施して白土を埋め込みます。
鉄分を多く含んだ素地に表現された白象嵌は釉薬を通して雅味が感じられ、
慎ましいながらにも華やいだ静かなる品格を備えています。
侘び茶が隆盛した室町~桃山時代には茶の湯に取り上げられ、
唐物茶碗の硬質さと異なった持ち味は以後の茶の湯の世界に新しい展開を促しました。
文様や技法によって暦手、花三島、礼賓三島、彫三島、刷毛三島、御本三島等に分類され、
その無垢な味わいや温かみは日本の茶人に愛玩されてきました。
主たる茶碗の一つとして「写し」も繰り返し手掛けられています。