
馳走なかむら
2022年12月18日
中洲の喧騒から離れた福岡市博多区対馬小路にある正統派の懐石料理店「馳走なかむら」さん。
市中の山居を思わせる数寄屋造りの佇まいは、
京都の名店「未在」等を手掛けた建築家・杉原明氏による設計。
凛とした清々しい空気間。
おもてなしの心が隅々にまで行き届いています。
玄関を開けて、カウンター、お部屋に着くまで、
四季折々の移ろいを感じる事ができます。
博多を象徴する愛らしい中村人形。
聖夜の音が聞こえてきそうです。
冷え切った身体に優しい生姜の香煎。
書道家・甲斐玲子氏の流れを汲む女将さんによるお品書き。
眺めているだけで温かくなるような焚火の室礼。
岡本作礼先生の鈞窯に盛られた、もちもちの飯蒸し、雲丹、銀杏、削りたての唐墨。
極上の濃厚な味わい。
至高のジビエ「ツキノワグマ」のお椀。
香り高い脂はあっさりとして深みがあり、
根セリとの相性は抜群。
向付には季節の盛り込み。
一品目は漁獲量も限られる幻の魚「ヤイトカツオ」。
さっととろけ、甘みが広がります。
さりげなく使用されるLALIQUEもハイセンス。
天然のトラフグ。
食感がたまりません。
サンタの八寸。
カマスの風干し、クワイ煎餅、あん肝もろみ、ほうれん草の白がけ、伊勢海老の酒盗。
お酒が進む事、間違いありません。
車で来た事が唯一の心残り。。
冬の味覚の女王「セイコガニ」。
器には雲龍文が描かれた江戸中期における上手の国内向け古伊万里。
海老芋の田楽味噌。
口に入れたら、溶けてなくなります。
ホクホクの鰻、百合根の甘味、柚子の豊かな香り。
絶妙のマリアージュ。
鹿児島産・黒毛和牛のイチボに椎茸。
リンゴのソースが素材の旨味を引き立てます。
器には北大路魯山人の小岱木葉彫文角平向。
地元・九州の焼物を大切にしながら、
日本料理を高めたいというご主人の熱い志が伝わってくるかのようです。
かまど焚きのご飯は一粒一粒が立って、最高に美味しい。
香の物、肉胡椒、白味噌でお代わりが進みます。
ちりめん山椒も抜群。
口直しの水物には苺、ラ・フランス、シャーベット、ワインゼリー。
自家製の栗蒸し羊羹。
締めはお抹茶。
落ち着きある個室は時を忘れるかのような居心地の良さ。
女将さんの嬉しいお見送り。
帰るのが名残り惜しくなります。
馳走なかむらさんを象徴する恵比寿さんの庖丁式は中村弘峰先生によるデザイン。
背景に厨房、周囲は節句(上巳、端午、七夕、重陽)で彩られています。
馳走なかむらさんで食事を終えた後、
いつも満たされた幸せな気持ちになります。
ご主人と女将さんの温かい人間性、仲居さんの細やかなお心遣い。
一流の名声は博多を超え、全国のお客様を魅了しています。
この名店に通えるよう、明日も頑張りたいです。
〒812-0020 福岡県福岡市博多区対馬小路2-10
馳走なかむら
TEL 092-292-7663
http://http://chisou-nakamura.jp(外部リンク)