小倉駅から徒歩約5分。
北九州の繫華街・鍛治町にお店を構える「実南」さん。
食通の間では「魚菜 ぎやまん」で知られた名店ですが、
2021年の6月から心機一転、屋号を改められました。
由来は俳句等の季語に「実南天(南天に付く赤い実)」という言葉があり、
「難を転じる」、「縁起物」という意味を含んでいるそうです。
店主の南さんは修行時代に懐敷として南天を使用されていたようで、
「初心を忘れない」という思いも込められています。
大阪に生まれ、自然豊かな長崎の五島で育った南さんは、
大学進学を機に北九州に出て、
京料理の赤らくさんや、日本料理の琢磨さんで研鑽を重ねた後、独立されました。
私が初めて南さんのお店を訪ねたのは2015年で、
陶芸家の伊藤明美先生のご紹介によるものでした。
無駄を省いて洗練された店内、清潔感のある室礼。
店内に入ると、偶然、そこには伊藤明美先生が!!
伊藤先生から頂いた実南さんとのご縁に感謝しつつ、
同席させて頂く事に。
当時の思い出を遡り、話に花が咲く。
厳選された最高の食材。
四季の移ろいが感じられる豊かな時間。
南さんの人柄を現すような優しい味付け。
どれも本当に美味しく、舌鼓を打つ。
北海道の毛蟹、能登の岩もずく、アサツキの花、酢橘のゼリー
一つ一つの器や酒器にも南さんのセンスが光る。
内村慎太郎氏の唐津片口、辻村史朗氏の刷毛目ぐい呑。
諸子、京賀茂茄子
玄海の鯵、北九州のアコウ、萩の雲丹
アコウは塩水処理して一晩寝かす等、手間暇を惜しまない。
大分の鱧
生きた鱧を直前に占め、鮮度を大切にする。
半生のばちこ、風干し鮎、万願寺唐辛子
大分の鰻、山芋、木の芽
持参させて頂いた「初期伊万里蕪文皿」に南さんがストーリーを添えてくれる。
「蕪は鶉となり、山芋は鰻となる(想像できない事が起こるという事の喩え)」
今夜の実南さんでの伊藤先生との偶然の出会いを描いたような見事な演出。
お客様を主役とした一期一会の思い、博識からくる引き出しの多さ、
さりげなくこなすサプライズが本当に凄い。
李朝鉢に昆布出汁を入れて浸す。
貴重な古美術品も惜しみなく使う。
伊藤先生作、李朝写白磁を用いて。
爽やかさを白磁が更に引き立てる。
若松トマト、ジュンサイ
枝豆ご飯、水茄子
一服だけでなく、二服を所望すると、
思い入れのあるお茶碗で奥様によるお点前。
独立したすぐ後の2019年、ミシュランの星を獲得する等、快進撃が止まらない。
息がぴったりな二人三脚の優しいご夫婦の雰囲気に癒しを求めて、
県外から通われるファンも多く、
一度訪れると必ずリピートしたくなる中毒性があります。
予約困難ですが、本当にお勧めしたい最高のお店です。
〒802-0004 福岡県北九州市小倉北区鍛冶町1-3-4 美松コア1F
実南
TEL 093-531-1313