私が家業に入った当初は、コツコツと父の指導に従う毎日でした。半年を過ぎた頃から、お客様のお茶汲みをさせて頂けるようになり、細々とした仕事もさせてもらえるようになりました。父と母は二人体制で店を切り盛りし、当初は家族ぐるみで親しくさせてもらっているお客様も多かったようです。ミレニアム・イヤーであった2000年。インターネットもさほど世間に浸透していない中、お得意様から「ホームページを立ち上げて、全国に通販をしたら面白いですよ。」とアドバイスを頂きました。
当時は古美術業界でホームページを立ち上げているのは数軒程度という狭き範囲であり、革新的な試みと思い、私は丁稚の立場でありながら父にホームページへの試みを話してみましたが、昭和ながらの父は「古美術はインターネットで販売するものではない」と言って、なかなか縦に首を振ってはくれませんでした。そのような中、母が「崇が新しい試みを考えて話しているのだから、任せてみたら?」と父を説得してくれました。
手作りから初めたホームページですが、半年を過ぎた頃から徐々に様々なお客様とのご縁を頂く事ができ、立ち上げ当初のお客様とも今でも親しくさせて頂いております。今あるホームページの礎を築いてくれたのは柔軟性がある温かい母のおかげだと思っています。父が亡くなった後も妻の父母と行く家族旅行が恒例となっていますが、とてもムードメーカーな母は、変顔をして踊ったり、面白カラオケ大会などをして、お笑い芸人も顔負けな程、家族を盛り上げ楽しく笑わせてくれます。とても落ち着いた雰囲気だった父は、全く正反対の陽気な母を見て、あきれながらも楽しそうに母を見ていた姿が今でも目に焼き付いています。
今日は母の日ですが、どうかいつまでも元気で、そして家族の人気者でいて下さい。