精緻な筆致に理想的な発色を示す藍柿右衛門の優品です。肉取りの厚い造形はしっくりと手に馴染み、筒盃として愉しむ事ができます。黒柿の蓋が誂えられておりますので、薄茶器にも転用できます。
- 時代
- 江戸中期
17世紀後半
- 重量
- 135g
- 口径
- 5.4×5.4cm
- 高さ
- 7.1cm
- 底径
- 3.8cm
- 次第
- 蓋
仕覆
桐箱
- 状態
- 完品
美しい染付、秀抜な焼き上がりと優品の条件を満たしています。
柿右衛門様式
柿右衛門様式とは延宝年間(1673~81)頃を中心に焼成された伊万里焼の様式です。
現在における「柿右衛門」の定義とは柿右衛門家のみで造られた独占的な作品ではなく、
V.O.C(オランダ東インド会社)からの大量注文を受けて、
肥前有田の窯々で輸出用に完成された作品群として「様式」の語句が付加されています。
絵師の手による余白を活かした繊細な絵付け、精緻を極めた作行を特徴とし、
優雅で気品高い柿右衛門様式は欧州の王侯貴族を魅了した高級花形商品として、
V.O.Cによって大量に積み出しされた磁器の中でも特に根強い人気を博しました。
更に「濁手」と呼ばれる乳白色の温かみある柔和な素地は色絵の鮮麗さをより際立たせ、
以後のマイセンやシャンティイにおける欧州磁器の焼成に大きな影響を与えました。
尚、柿右衛門様式には「渦福」と呼ばれる銘款が入った作品が多く見られます。
デザイン化した「福」が渦を巻いたように見える事から呼び慣わされている名称です。
「金」、「古人」等の銘款は上手の優品に多く見られます。
江戸時代に輸出された古伊万里も豪華絢爛な美を示しましたが、
人々の目を引いて関心を集めているのはやはり柿右衛門様式の作品です。