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 天平堂

美術品を蒐集するうえで重要とされるのは、
作品を迎える「入口(購買先)」と、手放す際の「出口(売却先)」です。
これらを見極めることは、ストレスのない充実したアートライフを送るための大切な判断基準となります。

美術品を求める事ができる場所

古美術店やアートフェアに足を運ぶのが一般的ですが、
近年はインターネットの普及により、美術業界のあり方そのものが大きく変化しました。

古美術店・アートギャラリー

メリット

  • 名店と呼ばれる老舗や一流の専門店は、信用と誇りを重んじるため、高品質の作品を入手しやすい環境が整っている。
  • 購入後もアフターサービスを受けられる場合が多く、安心して長く付き合える。

デメリット

  • 敷居が高く、気軽に入りにくい面がある。
  • 相性の良い店舗と出会うまでに、時間を要し、遠回りとなることもある。

アートフェア

メリット

  • 多様なジャンルの作品を、気兼ねなく、自分のペースでゆっくりと鑑賞できる。

デメリット

  • 店舗よりもブースが小さいことが多く、人で混み合いやすいため、落ち着いて鑑賞することが難しく、タイミングによっては十分な説明を受けられない場合もある。

百貨店(デパート)

メリット

  • 人気作家や物故作家の代表作やラインナップが充実していることが多い。
  • 作家本人や専門店が関わっているため、作品の品質面でも高い信頼性が確保されている。

デメリット

  • プライマリー価格での発表やプレミアム価格の設定により、割高になる傾向がある。

インターネット

メリット

  • ウェブサイトを開設している店舗やインターネットオークションでは、営業時間外でも作品を閲覧したり購入したりすることができる。

デメリット

  • 信用の確立していない店舗のウェブサイトやインターネットオークションでは、贋作を掴んでしまう可能性があるほか、アフターサービスが十分でない場合も多い。

公開オークション

メリット

  • 数多くの作品の中から選ぶことができ、場合によっては自分の踏値以下で落札できる可能性もある。

デメリット

  • 需要と供給のバランスによって落札価格が決まるため、どうしても入手したい競合同士が会場の熱気の中で競り合うと、想像を超える価格となり、手に入れられない場合がある。
  • 適切に判断するためには、専門的な知識や真贋を見抜く確かな目が求められる。

上記のようにさまざまな入手方法がありますが、ご趣味として蒐集される場合には、下記の方法をお勧めいたします。

  • 信頼できる美術商による実店舗やインターネット販売
  • 信頼できる美術商が参加しているアートフェア

美術と一口に言っても、鑑賞陶磁、茶道具、仏教美術、絵画、コンテンポラリーなど、多岐にわたる分野が存在します。私たち美術商も、それぞれ得意とする専門領域が異なります。美術全般に関する基礎的な知識は備えておりますが、すべての分野を一店舗で専門的に取り扱うことは不可能です。例えば茶道具という限定された分野でさえ、「お稽古道具は扱うが、茶事・茶会で用いる本質的な茶道具は扱わない」、「新しい茶道具は得意だが、古い茶道具は専門外である」といった偏りも見られます。「名品」と呼ばれる一級品は、その分野を深く追究している一流の専門店に集まる傾向が強いのも事実です。

美術商は店頭に並べる作品に店主の人間性が表れるといっても過言ではありません。作品の正しい価値を見抜く眼を持ち、それを適切な形でお客様にご提案することを第一に考えています。また、専門店では作品が生まれた時代背景や特徴について、より深い説明を聞けることも大きな魅力です。作品を購入する際には「店を選ぶ」、「店主の人間性を選ぶ」という視点が重要であり、信頼関係を重ねることで、さまざまな面で厚遇を受けられるようになります。さらに、一店舗に限定せず、二-三店舗ほど贔屓の店を持つことが望ましいでしょう。どこで、どのように作品を求めるかは、充実した蒐集品を形成するうえで最も重要な要素となります。

美術商が担う役割と存在意義

美術品には常に真贋の問題が付きまといます。購入後に贋作かどうかを気にしながら作品を所有することは大きなストレスとなり、その対価を支払った結果としては痛ましい限りです。贋作については「必要悪」と捉える考え方もあり、本物だけでは面白みに欠ける、審美眼を磨く機会になるといった意見もあります。しかし、近年の模倣技術の向上には目を見張るものがあり、時代の変遷によって判断が難しいグレーゾーンの作品も存在します。美術書籍や有識者から知識を得たとしても、こうした作品を見抜き、正しく判断することは至難の業です。

一定の水準に達した会員制オークションに参加できる美術商は、年間に数万点もの作品を目にし、売買を通じて研鑽を積んでいます。こうした実践に裏付けられた経験と知識を基盤に、美術品とお客様をつなぎ、運営に必要な対価を頂戴しております。お客様が真贋の不安を抱えることなく、直感で「好き」と思える作品を選べる環境を整えることこそ、私たち美術商の務めです。とはいえ、私たちも機械ではなく人間である以上、絶対に間違いがないとは言い切れません。万一誤りが生じた際に責任を果たすことができるかどうかが、美術商としての信用であり、誇りでもあります。もちろん、誤りを限りなくゼロに近づけるため、日々精査と研鑽を重ねることは言うまでもありません。私たちはその道のプロとして、正しい見解と誤りのないご提案をお約束いたします。

販売価格に対する根拠

古美術品の価格や相場は「あってないようなもの」と世間では思われがちです。ミュージアムピース(美術館や博物館で保存すべき逸品)のような極めて希少な作品に関しては、その傾向を完全には否定できません。しかし、一般的な作品の価格設定に関しては、オークションでの取引価格が基準・根拠となり、そこに運営に必要なランニングコストなどを加味して決定されます。

購入に際しての上手な選択方法

価値あるものに投じるために大切なのは

  • 1.妥協しない姿勢を貫くこと
  • 2.数よりも品質を重んじること
  • 3.上質な作品をできる限り多く観ること

「とにかく好きな作品を選ぶ」という姿勢は、美術を愉しむうえで最も大切な要素といえます。しかし、もう一歩踏み込んで考えてみると、蒐集が進み、より高品質の作品と出会った際に、過去に求めた作品がどうしても見劣りしてしまったり、時には自身の趣向そのものが大きく変化してしまうこともあります。魅力的で状態の良い一級品は需要も高く、お手放しになる際にもスムーズに事が運びやすい一方、状態を問わず価格を優先して選んだ作品は需要が少ない傾向にあり、コレクションを充実させるという観点では遠回りになりがちです。飲食店様の器としてのご使用や、室礼・空間づくりの一環として破損リスクを考慮し、価格を重視して選ばれることは正解といえます。しかし、鑑賞陶磁の分野においては、並の作品を五点求めるよりも、希少で上手の一点に集約することを強くお勧めいたします。こだわり抜いて選んだ作品は飽きが来にくく、長く寄り添ってくれる存在となります。そして、「厳選されたコレクション」と「何となく感覚や価格だけで集めたコレクション」とでは、結果として大きな差が生まれます。

購入を悩む作品は一呼吸置いて考える

私たちもビジネスである以上、できるだけ多くの作品をご購入いただきたいという思いはございます。しかし、無理にお勧めしてしまうと、後に歪みが生じ、お客様が購入を後悔するようなストレスにつながりかねません。それは、美術を愉しむという過程において決してあってはならないことです。この仕事に携わるなかで、私は幾度となく「作品が自ら行き先を選んでいる」と感じる瞬間に立ち会ってきました。作品にも命が宿り、眼に見えないご縁によって結ばれていくものであり、私たちの想像を超えた、科学では説明しきれない一期一会が確かに存在するのだと思います。

美術品の投機性

美術品は資産価値を伴うものであり、なかでも中国美術は近年、投機対象として大幅な価格上昇を遂げてきました。しかし、資産として捉えるのであれば、金や株式投資、不動産運用の方が効率的であるといえます。美術品の価格は需要と供給のバランスによって定まり、経済状況や流行による需要の変動が大きく影響します。バブル期には需要が供給を大きく上回り、多くの作品が高騰しましたが、その反動として現在では古伊万里や地方窯をはじめ、室礼に適さない多くの作品が不当ともいえる評価を受けているのが現状です。こうした資産価値ばかりに心を奪われてしまうと、本質を見極める眼が曇ってしまいます。美術商の中でも、道具を心から愛する者ほど、金銭的価値を超えた「作品への思い」で向き合っています。そこにこそ感動や癒し、美の本質が宿るからです。心で感じる体験は人生に彩りを添え、気の置けない仲間との共感は何ものにも代えがたい魅力となります。未来の市場動向はある程度の予測はできても、確定的なものではありません。ただ、近年は二極化の傾向が強まりつつあり、美術市場でも佳作と駄作の明暗がより明確に分かれつつあります。美術品は金融商品ではありません。ご自身の好む分野において、魅力的な作品や状態の良い一級品を蒐集していくことこそ、美術品における最大の投機といえるでしょう。