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 天平堂

茶事

Chaji

茶事


口切りの茶事(11月)

口切りの茶事とは葉茶壷の口を切り、その年の新茶を挽いて催される極めて格式の高い茶事です。枯れ枯れとした侘びの極致である名残りの茶事から一転して口切りの茶事ともなれば、炉壇を塗り替え、畳を新たにし、障子を張り替え、露地は垣や樋の青竹に結い替える等、茶家の新年を迎える心構えをします。初座の床飾りは口切りに相応しい品格の高い掛物が用いられ、床上や違棚の下には網をかけた葉茶壷が飾られます。亭主は席入りした挨拶の後にお壷拝見を請われると床から葉茶壷を下ろして装束を外し、水屋から茶入日記(各種の茶銘と摘んだ日付を明記した紙)を正客に持ち出します。正客以下は茶入日記の拝見が終わると何れの銘の茶を頂くかを相談します。亭主は葉茶漏斗(口切りにのみ用いる道具)で壷の口を切り、正客に茶の所望を伺います。所望の袋茶(濃茶)を取り出して右側の挽家に入れ、漏斗に出された詰茶(薄茶)も左側の「詰」と記された挽家に入れ、再び封紙で壷の口を糊付けして封印を押します。口覆をかけて正客まで持ち行き、連客の拝見が終わると網をかけて水屋に持ち帰ります。続いて炭手前(初炭)に進みますが、炭斗には瓢が使用されるのが約束です。香合の拝見が終わると懐石となります。亭主は膳が出てから茶臼で茶を挽き始めます。臼の微かにきしむ音、茶ふるいにかけるコトコトといったささやかな音を聞きながら、懐石を味わうのも口切りなればこその風情です。客は中立ちの後に蹲踞で手を清め、再び席入りして後座の床飾りを拝見します。床上には前席で拝見した葉茶壷が網を脱ぎ、長緒と乳緒を真・行・草に結んで飾られます。挽き立ての濃茶が客に供された後、後炭を直して薄茶にて終わります。