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 天平堂

大樋長左衛門

Chozaemon Ohi

大樋焼

大樋焼とは石川県金沢市で江戸時代から焼き継がれている楽焼です。
京都の玉水焼が明治初期に途絶えた結果、樂家の技術を直接受け継ぐただ一つの脇窯です。
脇窯とは樂家以外で楽焼を焼成する窯の総称です。
1666(寛文6)年に加賀藩5代藩主・前田綱紀の命で裏千家4代仙叟宗室が招かれた際、
茶碗師として土師長左衛門を同道した事に始まります。
長左衛門はこの地で良質の陶土を見出し、
加賀国河北郡大樋村(現:石川県金沢市大樋町)に開窯して仙叟好みの茶道具を焼成しました。
以来、藩の御用も務めて地名に因んだ「大樋」姓を名乗る事が許可されました。
明治維新の動乱の中で一時中断する事になりますが、窯を春日町に移して再開されました。
軟らかくねっとりとした飴釉という茶褐色の釉薬を特色に、
手捏ねと箆削りによる素朴で雅味のある茶陶造りを行っています。


初代 大樋長左衛門 1631(寛永8)年~1712(正徳2)年

初代大樋長左衛門は河内国土師村(現:大阪府藤井寺市)の出身で、
姓を土師(後に大樋)、名を長二(後に長左衛門)、号を芳土庵(隠居後)といいます。
1656(明暦2)年、京都に出て二条河原町に住み、樂家4代一入に樂焼の技法を学びました。
1666(寛文6)年に加賀藩5代藩主・前田綱紀の命で裏千家4代仙叟宗室が招かれた際、
茶碗師として土師長左衛門を同道しました。
長左衛門はこの地で良質の陶土を見出し、
1686(貞享3)年に加賀国河北郡大樋村(現:石川県金沢市大樋町)に楽焼の窯を築窯しました。
以来、藩の御用も務めて地名に因んだ「大樋」姓を名乗る事が許可されました。
仙叟の指導の下に茶道具を焼成している為、作品の殆どに仙叟好みが反映されています。
海老、渦、寿老人等の文様意匠がこれより大樋焼歴代に伝わっていきます。


2代 大樋長左衛門 1686(貞享3)年~1747(延享4)年

2代大樋長左衛門は初代大樋長左衛門の長男で、
名を長二(後に長左衛門)、号を芳庵(隠居後)といいます。
加賀藩6代藩主・前田吉徳と7代前田宗辰の陶器御用を務めました。
飾り気のない古格ある素朴な作行を示しています。
仙叟好みを受け継いで川海老や渦文を意匠とした作品も見られます。


3代 大樋長左衛門 1728(享保13)年~1802(享和2)年

3代大樋長左衛門は2代大樋長左衛門の次男で、
名を勘兵衛(後に長左衛門)、号を芳庵(隠居後)といいます。
加賀藩8代藩主・前田重煕、10代前田重教、11代前田治脩の陶器御用を務めました。
父の作風を踏襲して飾り気のない素朴で穏やかな作行を示しています。
作品は初代に酷似しますが、
独特の豪放さは若干影を潜めて茶陶らしさが加わっています。


4代 大樋長左衛門 1758(宝暦8)年~1839(天保10)年

4代大樋長左衛門は3代大樋長左衛門の三男で、
名を勘兵衛(後に長左衛門)、号を土庵(隠居後)といいます。
加賀藩10代藩主・前田重教、11代前田治脩、12代前田斉広の陶器御用を務めました。
1822(文政5)年、前田斉広の御用窯となって銀五百目を賜り、二人扶持を給されました。
1824(文政7)年、隠居して「土庵」と号しました。
大樋家歴代の中で初代に次ぐ名工とされ、
4代から正式に加賀藩の御用を務めたとされます。
飴釉と共に多くの色彩表現を試みたのも4代からで作行も幅広いです。
個性的な表現と技巧的な技術によって品格ある作品を多く残しました。


5代 大樋長左衛門 1799(寛政11)年~1856(安政3)年

5代大樋長左衛門は4代大樋長左衛門の長男で名を勘兵衛(後に長左衛門)といいます。
加賀藩12代藩主・前田斉広の陶器御用を務めました。
1816(文化13)年、5代大樋長左衛門を襲名しました。
1825(文政8)年、二の丸御殿御広敷と金谷御殿の御用を仰せられ、二人扶持を給されました。
1828(文政11)年に山上村(現:山の上町)の清水の土地50坪を陶器御用地として借り、
この年の暮れより年頭用の大福茶碗の献上が許可されました。
1847(弘化4)年、御壁塗御歩組の役職に就いて焼物方御用を兼ねました。
1850(嘉永3)年、江戸の本郷邸に11代将軍・徳川家斉が御成りの際に陶技を披露しました。
他に前田斉広の正室・真龍院、14代前田慶寧の陶器御用を務めました。
華やかで爛熟した安定感ある優品を多く残しており、
豊かな創意と巧みな技法により飴釉に加えて黒釉や白釉も用いました。
歴代の中でも名工の誉れ高く、「大樋焼中興の祖」と仰がれています。
裏千家11代玄々斎宗室が多くの書付を残しています。
1781(天明元)年に生まれたという説が古文献に記されていますが、定かではありません。


6代 大樋長左衛門 1829(文政12)年~1856(安政3)年

6代大樋長左衛門は5代大樋長左衛門の長男で名を朔太郎(後に長左衛門)といいます。
大福茶碗の献上を始め、父の陶器御用の手伝いをしました。
作風は父に類似しますが、比較的地味で穏やかな趣があります。
これまでの歴代は長命でしたが、父と同年に没した早世でした。


7代 大樋長左衛門 1834(天保5)年~1896(明治29)年

7代大樋長左衛門は5代大樋長左衛門の三男で名を道忠(後に長左衛門)といいます。
父や兄・6代大樋長左衛門に師事し、
加賀藩13代藩主・前田斉泰や14代前田慶寧の陶器御用を務めました。
幕末から明治の激動期に活躍し、
12代前田斉広の正室・真龍院、前田斉泰の正室・景徳院に大福茶碗を献上する等、
苦境の中にも御用窯としての伝統を守りました。
廃藩後は加賀藩の保護を失って明治維新の動乱の中で一時中断する事になります。
経済の疲弊と相関に文化・芸能に恵まれぬ苦しい時代を歩みました。
そのような情勢を反映してか作品には佳品が少ないです。
大らかな豊かさはなく、
作風は時代を反映した地味な物が多いです。


8代 大樋長左衛門 1851(嘉永4)年~1927(昭和2)年

8代大樋長左衛門は7代大樋長左衛門の従弟で、
本名を奈良理吉、名を宗春(後に長左衛門)、号を松涛・以玄斎(隠居後)といいます。
7代の二子(長男、次男)が大樋焼に従事しなかった為、8代を襲名しました。
明治の廃藩で衰退した大樋焼を再興し、現在の全盛期の礎を築きました。
7代や裏千家13代圓能斎宗室に師事し、伝統を守った創意ある作品を数多く残しています。
大徳寺486世宗般玄芳より「松涛」の号、圓能斎宗室から「以玄斎」の号を授かりました。


9代 大樋長左衛門 1901(明治34)年~1986(昭和61)年

9代大樋長左衛門は8代大樋長左衛門の次男として石川県に生まれました。
本名を長次郎、名を長左衛門、号を陶土斎といいます。
1917(大正6)年、石川県立工業学校窯業科を卒業後、父に師事して作陶に精進しました。
1923(大正12)年、金沢市東山公園麓の松林の中に工房「芳土庵」を設けました。
1925(大正14)年、9代大樋長左衛門を襲名しました。
大徳寺488世全提要宗より「大樋」印を授かりました。
1930(昭和5)年、宮中、大宮御所の茶室用品の御用命を受けました。
1935(昭和10)年、宮中、大宮御所、秋泉御茶室用御茶碗の御用命を受けました。
1936(昭和11)年、茶碗12ヶ月作陶展を開催しました。
1940(昭和15)年、内閣総理大臣・近衛文麿より自筆の「長左衛門」金印を授かりました。
1942(昭和17)年、工芸技術保存作家の指定を受けました。
1958(昭和33)年、日本工芸会正会員となりました。
1973(昭和48)年、日本陶芸展に推薦招待されて数印黒楽茶碗を出品しました。
1977(昭和52)年、裏千家15代鵬雲斎宗室より「陶土斎」の号を授かりました。
手捏ねによる樂焼本来の伝統的手法を忠実に守って歴代の中でも優れた陶才を発揮し、
江戸時代から続く大樋焼の技は円熟した非凡の境地を示しました。
侘びた中にも抑揚の利いた温雅な作風を示し、
大樋焼独特のねっとりとした飴釉の茶碗はもとより黒茶碗にも傑作を残しています。
たっぷりとした二重掛けの黒釉が作り出す「黒幕釉」を創案し、
その絶妙な垂れの景色は高い評価を受けています。


10代 大樋長左衛門 1927(昭和2)年生

10代大樋長左衛門は9代大樋長左衛門の長男として石川県に生まれました。
名を年郎(展覧会出品では年朗)といいます。
1949(昭和24)年、東京美術学校(現:東京芸術大学)工芸科を卒業しました。
作品がイタリア・ファエンツァ美術館に買い上げられました。
1954(昭和29)年、高松宮殿下に御台臨を賜りました。
1956(昭和31)年、日展で北斗賞を受賞しました。
1957(昭和32)年、日展で特選北斗賞を受賞しました。
1958(昭和33)年、日本陶磁協会賞を受賞しました。
1961(昭和36)年、日展で特選北斗賞を受賞しました。
1964(昭和39)年に朝日陶芸展評議員・審査員、
日本現代工芸美術展評議員・審査員に就任しました。
1967(昭和42)年、日展審査員に就任しました。
1968(昭和43)年、北国文化賞を受賞しました。
皇太子殿下に飴釉壺を献上しました。
1972(昭和47)年、石川県美術文化協会理事に就任しました。
1973(昭和48)年、中日国際陶芸展評議員・審査員に就任しました。
1976(昭和51)年、金沢市文化賞を受賞しました。
1978(昭和53)年、金沢市工芸会会長に就任しました。
日展評議員に就任しました。
日展の出品作品が外務省に買い上げられました。
1980(昭和55)年、現代工芸美術家協会理事に就任しました。
1982(昭和57)年、現代工芸美術家協会石川会委員長に就任しました。
石川県陶芸協会理事に就任しました。
日展で文部大臣賞を受賞しました。
1983(昭和58)年、現代工芸美術家協会常務理事に就任しました。
天皇両陛下が石川県行啓の際に献上の抹茶碗一対、天覧茶碗、食器一式を制作しました。
1985(昭和60)年、石川テレビ賞、日本芸術院賞を受賞しました。
日展理事に就任しました。
1986(昭和61)年、中日文化賞を受賞しました。
1987(昭和62)年、10代大樋長左衛門を襲名しました。
皇太子両殿下が石川県行啓の際に献上の抹茶碗一対を制作しました。
1988(昭和63)年、石川県陶芸協会会長、金沢大学教授に就任しました。
1989(平成元)年、金沢卯辰山工芸工房長に就任しました。
1991(平成3)年に天皇両陛下が石川国体行啓の際、
献上の抹茶碗一対、天覧茶碗、菓子器を制作しました。
1992(平成4)年、国民文化祭石川’92土と炎の芸術祭陶芸展審査員に就任しました。
1993(平成5)年、伊勢神宮式年遷宮の際に献納の「大樋飴黒天目茶碗一対」を制作しました。
1994(平成6)年、三笠宮両殿下に御台臨を賜りました。
1995(平成7)年、日本陶磁協会理事、金沢市美術館等の構想懇話会委員に就任しました。
高円宮両殿下に東京テーブルウェアーフェスティバル御台臨を賜りました。
1996(平成8)年、石川県芸術文化協会理事に就任しました。
1997(平成9)年に石川県美術文化協会理事、現代工芸美術家協会理事、
世界工芸都市会議・金沢’97開催委員会会長、国民文化祭美術展審査員に就任しました。
サッチャー英国元首相に花瓶を献上しました。
スウェーデン国王両陛下に金沢卯辰山工芸工房の御来館を賜りました。
「大樋飴黒茶碗一対」が石川県よりスウェーデン王室へ献上されました。
米国ロチェスター工科大学より名誉博士号を授与されました。
1998(平成10)年、金沢十匠会会長に就任しました。
1999(平成11)年、日本芸術院会員となりました。
2000(平成12)年、金沢学院大学美術文化学部学部長・教授に就任しました。
2001(平成13)年、日本現代工芸美術展審査主任、日展常務理事審査員に就任しました。
2003(平成15)年、茶道文化振興賞を受賞しました。
2004(平成16)年、文化功労者として顕彰を受けました。
日本陶磁協会特別記念功労賞を受賞しました。
2005(平成17)年、金沢市名誉市民の称号を受けました。
2006(平成18)年、金沢学院大学副学長に就任しました。
2008(平成20)年、日展顧問に就任しました。
2009(平成21)年、陶治斎拝命記念個展を催しました。
2010(平成22)年、金沢世界工芸トリエンナーレ実行委員長に就任しました。
2011(平成23)年、日本現代工芸美術展審査主任に就任しました。
文化勲章を受章しました。
石川県名誉県民の称号を受けました。
伝統ある大樋焼の茶陶造りを継承すると共に日展を中心に意欲的に活躍しています。
多彩な釉技によって古典をよく咀嚼した現代感覚に溢れる陶芸世界を展開しています。


大樋年雄 1958(昭和33)年生

大樋年雄は10代大樋長左衛門の長男として石川県に生まれました。
1981(昭和56)年、玉川大学文学部芸術学科を卒業しました。
1984(昭和59)年、ボストン大学大学院を終了しました。
1985(昭和60)年、ボストン大学講師に就任しました。
1986(昭和61)年、北国賞、石川県知事賞を受賞しました。
1987(昭和62)年、金沢市長最優秀賞を受賞しました。
1988(昭和63)年、北国賞を受賞しました。
1989(平成元)年、ロチェスター工科大学客員講師に就任しました。
1990(平成2)年、現代美術展で最高賞を受賞しました。
1991(平成3)年、石川県美術文化協会会員・審査員、金沢市工芸協会理事・審査員に推挙されました。
1993(平成5)年、日本工芸会正会員となりました。
1995(平成7)年、北の菓子器展で大賞を受賞しました。
1997(平成9)年、現代美術展で美術文化大賞を受賞しました。
いしかわインテリアデザイン賞大賞を受賞しました。
1998(平成10)年、金沢の月心寺で得度し、「大玄雄月」の号を授かりました。
2000(平成12)年、日本現代工芸美術展で現代工芸賞を受賞しました。
2002(平成14)年、金沢市文化活動賞、石川県インテリアデザイン賞を受賞しました。
日展で特選を受賞しました。
日本現代工芸美術展で現代工芸賞を受賞しました。
2003(平成15)年、全国伝統的工芸品公募展で中小企業庁長官賞を受賞しました。
2004(平成16)年、日本現代工芸美術展で本会員賞を受賞しました。
グッドデザイン賞を受賞しました。
2005(平成17)年、日展で特選を受賞しました。
2008(平成20)年、日本現代工芸美術展で東京都知事賞を受賞しました。
2009(平成21)年、日展で会員賞を受賞しました。

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