松樹下に佇む愛らしい兎文を題材とした古染付です。周囲には陰と陽の組み合わせによる八卦文が配されています。
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- 商品コード
- 230723-3
- 時代
- 明時代末期
17世紀前半
- 重量
- 302g
- 口径
- 19.7cm(最長:20.9cm)
- 高さ
- 3.5cm
- 底径
- 12.1cm
- 次第
- 桐箱
- 状態
- 完品(縁に虫喰があります)
地肌や染付の発色、焼き上がりも良好で、素晴らしい状態を保っています。
古染付
古染付とは明時代末期の天啓年間(1621~27)を中心に景徳鎮民窯で焼成された染付です。
特に日本向けの作品で遺例も日本に多いです。
新渡りと呼ばれる清時代の染付に対し、古式に属する古渡りの染付との意味合いで、
独特の様式を持つ一群が「古染付」と独立して呼ばれるようになりました。
日本の茶人からの注文品である茶陶と日用品とに大別されており、
茶陶としての古染付は日本人に親しまれた陶胎の厚さに因んでか総体に肉取りが厚いです。
明時代末期頃は日本の茶人が新奇な茶道具を注文焼成させる風潮が盛んであった時期で、
其々に好みの茶道具が発注されました。
古染付の多くは素地と釉薬の収縮率の相違から釉薬が剥落して胎土を露しています。
まるで虫が喰ったように見えるその様子からこの現象を「虫喰」と呼びます。
口縁や角部等の釉薬が薄く掛かった所に虫喰が多く見られるのも特徴の一つです。
通常の焼物としては欠点対象にさえ成り得るものですが、
茶人はここに自然の雅味を見出して喜び、粗笨な味わいを美的効果として評価しました。
兎
月に兎が住むという伝説は仏教説話ですが、月の餅つき伝説は日本独自のものです。
波兎は琵琶湖の竹生島をモチーフにしているとされ、
謡曲『竹生島』の「月海上に浮かんでは兎も波を走るか面白の浦の気色や」に因みますが、
鰐鮫を欺いて海を渡ろうとした因幡の白兎のイメージも投影されていると考えられます。
宋への留学を終えて帰路についた大応国師の船が嵐に遭遇した際に白兎が波上を疾駆して、
水路を開き窮地を脱したという説話も知られており、波兎との関係が注目されています。
又、波兎は火伏せの神としても知られており、火を扱う陶工だけでなく、
当時の人々の火伏せの神への信仰心も強い背景となっています。
月と共に描かれて不老不死や再生の象徴として古くから中国でも愛好されてきました。
初期伊万里においても明時代末期の古染付に類似する作品が確認されています。
構図もほぼ同じで月兎文様が描かれている事から古染付の影響と考えられています。
古染付に見られる兎は耳が短く、
初期伊万里においては耳が長いといった点も特徴の一つです。