
今回は天平堂に約2年勤めて頂きました坂口浩さんをご紹介させて頂きます。
坂口さんは「small.object」という名前でInstagramをされています。
私が19才の頃に父のお客様としてお会いしたのが初めてで、かれこれ20年のお付き合いになります。
第一印象は若いのに、とても礼儀正しく、マニアック(良い意味で)な感じの方だなぁ。
と思いました。
天平堂にご自宅が近い事もあり、お休みの日はよくお店に足を運んで下さいました。
古九谷や柿右衛門を中心とした肥前磁器を独自の目線で蒐集されており、
得意分野に関しては右に出る方はいないのではという位の優れた記憶力を備えています。
事実、お店で取り扱った作品が某書籍の所載品であったり、原三渓氏の旧蔵品であったりと、
いくつもの作品を発掘して頂きました。
坂口さんは審美眼に適った作品に出会うと迷わず購入し、
月々の収入をほとんど美術品につぎ込んでいくという何とも漢気あふれた方でした(笑)。
父の黒子役であった若かりし頃の私は、この坂口さんの美術品への圧倒的な情熱に、
驚きと感銘を受けていました。
こうした出会いから年数も経過し、坂口さんと親身になるに連れ、あるタイミングで意を決し、
「天平堂を手伝って頂けませんか」とご相談したところ、
数日間ご考慮頂きました後に快いお返事を頂き、共にお店を支えて頂く事となりました。
坂口さんは融通が効かない位の生真面目な性格で、とても責任感が強く、
一生懸命やりすぎる事で時に自分に負荷を掛けてしまう程です。
高齢の父は店舗から近距離に住んでいました。
健康の為と時折歩いて帰る父を思い、帰宅途中で交通事故やトラブルに巻き込まれないようにと、
坂口さんは気付かれないように後ろを付けて歩き、
父を見届けてから、ご自身の家に帰られるという心優しい人です。
この話を聞いた時、私は実の息子ながら反省させられました。。
他にも横断歩道でお年寄りが歩いている様子を見かけたら、さっと手を取ったりと、
自然と行動ができる美しい心を持っています。
好きな古美術に造詣深く、天平堂で坂口さんを指名されるファンの方も多かったです。
お客様にとって何でも話しやすく、心癒されたのかもしれません。
当時は小倉から福岡への移転、更にその3ヶ月後に父が亡くなったこともあり、
憔悴していた私を心身共に支えて頂きました。この時の御恩は忘れる事ができません。
通勤距離やご家族の問題も含めて、天平堂を離れる事になりましたが、
今でも本当にお気に掛けて下さいます。
坂口さんと共にお仕事できた期間は決して長くはありませんでしたが、
目には見えない人としての在り方や優しさを沢山学ばせて頂き、
言葉では言い尽くせない深い時間を過ごせたのではないかと思っております。
美術品がこんなにも人を魅了するものなのかと教えてくれたのも坂口さんかもしれません。
これからも坂口さんのますますのご発展を祈念しております。
たまにはお顔を見せに遊びに来て下さいね。
リバーウォーク北九州
「天平の風」は天平堂に関わって下さった方々に感謝を込めて少しずつ綴っていくコラムです。