絵文様 古美術天平堂

絵文様

【動物文様】 【植物文様】 【人物文様】 【その他の文様】

【動物文様】

鮎 −鮎−
鮎は川底の石に付く珪藻類を食べて成長する淡水魚です。
稚魚期は海へ下って越冬し、初春に川を上って急流に棲み、秋に川の中流域で産卵します。
寿命は普通一年である事から「年魚」と呼ばれ、
中には越年鮎も知られています。
鮎の肉は香気を帯びている事から「香魚」とも呼ばれています。
鶯 −鶯−
鶯は古くから飼い鳥として珍重されてきました。
夏は山地帯の低木林で繁殖し、冬は低地に移って市街地にも現れます。
梅の香にとまる姿は美しく、
「梅に鶯」とは取り合わせの良い例えを指します。
兎 −兎−
月に兎が住むという伝説は仏教説話ですが、月の餅つき伝説は日本独自のものです。
波兎は琵琶湖の竹生島をモチーフにしているとされ、
謡曲『竹生島』の「月海上に浮かんでは兎も波を走るか面白の浦の気色や」に因みますが、
鰐鮫を欺いて海を渡ろうとした因幡の白兎のイメージも投影されていると考えられます。
宋への留学を終えて帰路についた大応国師の船が嵐に遭遇した際に白兎が波上を疾駆して、
水路を開き窮地を脱したという説話も知られており、波兎との関係が注目されています。
又、波兎は火伏せの神としても知られており、火を扱う陶工だけでなく、
当時の人々の火伏せの神への信仰心も強い背景となっています。
月と共に描かれて不老不死や再生の象徴として古くから中国でも愛好されてきました。
蟹 −蟹−
蟹は華甲(還暦)の象徴とされています。
「華」の字を分解すると6つの「十」と「一」になり、
「甲」は甲子で十干十二支の始まりです。
還暦の吉祥である「菊と蟹」は華甲(菊=華、蟹=甲羅)を表現しています。
又、中国で蟹は「横行君子」とも呼ばれ、
権力に抗って横(我が道)に行くという意味があります。
亀 −亀−
亀は古くから鶴と共に長寿の象徴とされ、
吉祥の動物として尊ばれました。
中国の神仙思想に説かれる蓬莱山には松竹梅や鶴と共に亀が描かれます。
−川蝉−
川蝉(翡翠)は水辺に生息する小鳥で鮮やかな水色の体色と長い嘴が特徴です。
美しい外見から「渓流の宝石」、「青い宝石」とも呼ばれ、
両翼の間から覗く背中の水色は鮮やかで光の当たり方によっては緑色にも見えます。
宝石の翡翠はこの鳥の羽色に由来して名付けられました。
雁 −雁−
雁は秋の彼岸に飛来して越冬し、
春の彼岸に北へ帰るとされる渡り鳥です。
雁行というように飛ぶ時に横や鉤形に列を作るのも特徴です。
葦と共に描かれた葦雁文も盛んに用いられました。
麒麟 −麒麟−
麒麟は聖人が出て善政をしく前に現れると伝えられる想像上の瑞獣です。
古来中国では鳳凰、霊亀、応竜と共に「四霊(四瑞)」の一つとして尊崇されました。
体は鹿、尾は牛、蹄は馬、額は龍に似て頭上には一本の角があり、
背毛は五彩で体毛は黄色です。
名称に雌雄の区別があって雄の麒麟を「麒」、雌の麒麟を「麟」とします。
蝙蝠 −蝙蝠−
蝙蝠の語源は蚊をよく捕食する事から「蚊屠り」と呼ばれたのが由来とされています。
中国では蝙蝠の「蝠」が「福」と同音である事から吉祥を意味し、
五匹の蝙蝠を描いた物は「五福」と呼ばれ、
長寿、富貴、健康、子孫、繁栄のシンボルとされました。
鷺 −鷺−
鷺は飛翔する時に頚を乙字形に曲げ、
繁殖期には頭の羽毛が後方に長く伸びます。
「鷺」は「路」に通じる事から「路を示す鳥」といわれ、
一路栄華を意味します。
肥前磁器の主題として採り上げられているのは羽毛が純白の白鷺です。
鹿 −鹿−
鹿は神の使いとして神社に飼われる事もあり、
角は雄のみにあって毎年生え変わります。
中国では1000年で「蒼鹿」、1500年で「白鹿」、2000年で「玄鹿」になるとの伝説があり、
長寿の仙獣とされています。
寿老人には玄鹿を伴う表現が多いです。
又、福禄寿の「禄」と同音同声である為、文字の上からも長寿の象徴とされています。
日本においては平安時代に鹿と紅葉を組み合わせる文様が生まれ、
後に和様意匠として長く用いられる事になりました。
獅子 −獅子−
獅子は熱帯動物のライオンです。
古くは猪や鹿と区別する為に「唐獅子」ともいわれました。
日本に居なかった為、中国から伝わってきた絵画や文様を見て知った動物です。
その為に文様として描かれた獅子は実際のライオンとはかなり異なっています。
獅子には魔除けの力があるとされており、
牡丹と組み合わせた「唐獅子牡丹」、玉と戯れる「玉取獅子」が有名です。
「牡丹に獅子」とは取り合わせの良い例えを指します。
鶴 −鶴−
鶴は古くから亀と共に長寿の象徴とされ、
吉祥の鳥として尊ばれました。
沼地、平野、海浜等に群棲して地上で営巣・産卵します。
雌雄共に行動して一生を添い遂げる事から夫婦円満の象徴でもあります。
松の小枝をくわえた「松喰鶴」、 雲と共に描かれた「雲鶴」等も意匠として広く用いられています。
虎 −虎−
虎はシベリアからアジアに広く分布し、
多くは単独で森林や水辺に生息します。
竹林に潜む「竹虎」、
龍と共に描かれた「龍虎」等も意匠として広く用いられています。
鼠 −鼠−
鼠の殆どは夜行性で人間が寝ている間に食料等を食べたりするので、
「寝盗み」が転じて「ねずみ」という名称が付いたといわれます。
一生伸び続ける特徴的な門歯を持つ為、
常に何か硬い物をかじって前歯をすり減らす習性があります。
繁殖力の強さから子孫繁栄や五穀豊穣の象徴ともされ、
白鼠(大黒鼠)は福をもたらす大黒天の使いとして知られています。
大黒鼠は「大根食う鼠」と音が似ている事から縁起の良い取り合わせとされます。
鳳凰 −鳳凰−
鳳凰は梧桐(青桐)に宿り、竹の実を食べ、醴泉水を飲むという想像上の霊鳥です。
古来中国では麒麟、霊亀、応竜と共に「四霊(四瑞)」の一つとして尊崇されました。
聖天子出生の瑞兆として出現すると伝えられており、
体は前半身が麒麟、後半身は鹿、頸は蛇、尾は魚、背は亀、頷は燕、嘴は鶏に似て、
羽は孔雀のように五色絢爛で声は五音にかなって気高いとされます。
「鳳」は雄、「凰」は雌を指し、中国で龍は皇帝、鳳凰は皇后の象徴としても知られています。
桐、竹、牡丹等と共に描かれる事が多いです。
龍 −龍−
龍は水中に棲んで空を飛翔し、雲を起こして雨を呼ぶという想像上の生物です。
古来中国では麒麟、鳳凰、霊亀と共に「四霊(四瑞)」の一つとして尊崇されました。
中国で龍は皇帝、鳳凰は皇后の象徴として知られ、
朝鮮や日本においても重要な装飾文様として定着しました。
1297(大徳元)年に一般庶民の使用する龍爪は四爪とする建白が行われ、
1314(延祐元)年に元王朝は五爪二角の龍を皇帝・宮廷の象徴文様に決定しました。
明・清王朝もこの制度を継承し、
御器廠(景徳鎮官窯)において使用されましたが、
日本にはこうした五爪龍の思想は入りませんでした。

【植物文様】

紫陽花 −紫陽花−
紫陽花はユキノシタ科の落葉低木で原産国は日本が知られています。
六〜七月頃、球状の集散花序に四枚の蕚だけが発達した不実の実(装飾花)を多数付けます。
花色は白、青、赤、紫等、様々にありますが、
順々に色彩の変化するところから「七変化」の名称も知られています。
語源は「あづさい」で「あづ(集まる)」+「さあい(真藍)」青い花が集まって咲く
という事に由来しています。花色の変化から「移り気、心変わり」等の花言葉もあります。
尚、紫陽花は長崎市花にも指定されています。
梅 −梅−
梅はバラ科サクラ属の落葉高木で原産国は中国が知られています。
早春、葉に先立って色彩豊かに花を開きます。
花は五弁で色は白、紅、薄紅等があり、身近でおめでたい植物として好まれました。
香気が高く、夜に香るともいわれます。
日本にも奈良時代迄には中国から伝えられたとされています。
平安時代以降は特に香を賞で詩歌に詠まれました。
江戸時代以降は品種改良が進み、江戸中期頃から果実生産も盛んになりました。
果実は梅干や梅漬とし、木材は器物として使用されます。
その美しさを高潔な花として君子に例えた四君子(菊、蘭、竹、梅)にも含まれています。
君子とは徳が高くて品位の備わった人物を指します。
又、三友(松、竹、梅)、五友(菊、蘭、竹、梅、蓮)の一つとしても知られています。
文様に知られる「梅に鶯」とは取り合わせの良い事の喩えとされています。
楓 −楓−
楓はカエデ科の落葉高木で原産地は北半球が知られています。
四〜五月頃、黄緑色や暗紅色の多数の小花、後に果実を付けます。
紅葉とは秋に木の葉が紅変する事を指し、美しい楓の紅葉がそのまま植物名になりました。
紅葉狩り等、古くから秋の風物詩として欠かせません。
紅葉はカナダの国章にも指定されています。
蕪 −蕪−
蕪とはアブラナ科の一・二年草です。
日本にも古く中国から伝えられ、野菜として栽培されています。
根の球形部は多肉・多汁で白色の他に紅色等もあり、品種によって多様です。
春、花茎の先に黄色の十字形の花を総状に開きます。
菊 −菊−
菊はキク科キク属の多年草で原産国は中国が知られています。
品種が多く、花色は白、黄、桃、紅等と様々にあり、長生きの薬と信じられていました。
中国では早くから観賞の対象とされ、日本にも奈良時代末期に中国から伝えられました。
その美しさを高潔な花として君子に例えた四君子(菊、蘭、竹、梅)にも含まれています。
君子とは徳が高くて品位の備わった人物を指します。
又、五友(菊、蘭、竹、梅、蓮)、三香(菊、蘭、水仙)の一つとしても知られています。
皇室の紋章(16の重弁)に採用される等、その美しさは高く評価されました。
菊水は流水に菊花が浮かんでいる様子を描いた日本人好みの意匠で、
南北朝時代の武将・楠木正成の家紋としても名高いです。
重陽・菊の節句(陰暦9月9日)に奈良時代より宮中で催された観菊の宴を菊(水)の宴といい、
盃に菊花を浮かべた菊酒を飲むと長生きするといわれました。
桐 −桐−
桐はゴマノハグサ科の落葉高木で原産国は中国が知られています。
五月頃、芳香ある淡紫色の鐘状花が円錐状に集まって開きます。
日本でも各地で栽培され、材は軟質の色白で狂いが少ないです。
耐火性があり、吸湿性も少ない為、琴、箪笥、家具材、下駄、箱等に用いられます。
桐文は高貴な文様であり、菊と共に皇室の紋章とされています。
公家や武将は下賜される事によって使用する事ができました。
鳳凰は梧桐(青桐)に宿るとされる為、共に描かれる事が多いです。
芥子 −芥子−
芥子はケシ科の越年草で原産国は西アジアや東南ヨーロッパが知られています。
葉は白粉を帯びて縁にぎざぎざがあり、基部は茎を包みます。
初夏に白、紅、紫、紅紫等の大きな四弁花を開いて球形の果実を結びます。
白花の未熟実からは阿片が取れる為に日本では栽培が厳しく制限されていますが、
同じケシ科であっても雛罌粟や鬼芥子等には全く毒性がありません。
毒性があるのはアヘンケシで毒にも薬にもなります。
柘榴 −柘榴−
柘榴はザクロ科の落葉高木で原産地はペルシア・インド地方が知られています。
六月頃、鮮紅色五弁の筒状花を開きます。果実は秋に熟し、大きな球形を呈します。
果皮は黄紅色で黒斑があり、熟すると裂けて中にある多数の種子を一部露出します。
果樹や観賞用として世界各地に広まり、日本には平安時代に渡来しました。
中国では多産を意味する吉祥文様として扱われています。
日本でも鬼子母神の象徴として吉祥果とされています。
鬼子母神とは王舎城の夜叉神の娘で千人(万人とも)の子を産みましたが、
他人の子を奪って食したので仏は彼女の最愛の末子を隠して戒めました。
以後、仏法の護法神となり、求児・安産・育児等の祈願を叶えるといいます。
棕櫚 −棕櫚−
棕櫚とはヤシ科シュロ属の常緑高木の総称で特に日本原産のワジュロを指します。
高さは5m以上になり、幹は直立して枝がなく、麻のような毛で覆われています。
頂上に群生する葉は長い柄をもち、掌状に深裂して大きいです。
雌雄異株で五〜六月頃、葉の付け根から分岐した花序を生じ、淡黄色の小花を多数付け、
後に青黒色で球形の実を結びます。雌花は小球状の核果を結びます。
材は柱や器物、毛苞は縄・刷毛・箒・たわし、葉は夏帽子・敷物・うちわ等とされます。
水仙 −水仙−
水仙はヒガンバナ科の多年草で原産地は地中海沿岸が知られています。
シルクロードを経て唐時代に中国へ伝わり、日本には平安時代に齎されました。
語源は「水の仙人」を意味する中国古典に由来します。
春に先駆けて清楚で香しい花を咲かせる水仙は新春の瑞兆花ともされ、
雪中に毅然として咲く「雪中花」の名でも知られています。
三香(菊、蘭、水仙)の一つとされ、
福井県越前海岸の群生(越前水仙)は有名で福井県花に指定されています。
春の訪れと共に咲く水仙は欧米で希望の象徴とされ、
癌患者をサポートする団体の多くで募金活動のキャンペーンに使用されています。
竹 −竹−
竹はイネ科タケ亜科の多年生常緑木本で原産国は日本や中国が知られています。
冬も緑を保つ生命力から縁起が良いものとされ、
その美しさを高潔な花として君子に例えた四君子(菊、蘭、竹、梅)にも含まれています。
君子とは徳が高くて品位の備わった人物を指します。
又、三友(松、竹、梅)、五友(菊、蘭、竹、梅、蓮)の一つとしても知られています。
語源は成長が早く「丈」が伸びるところからの転とされています。
「竹に雀」、「竹に虎」とは古くから親しまれてきた題材です。
椿 −椿−
椿はツバキ科の常緑高木・低木で原産国は日本が知られています。
花には一重・八重・斑等の種類があり、 普通は早春に華やかな花を付けます。
室町・桃山時代に盛んになった茶道や華道と共に大きな流行を見るようになりました。
特に茶道では炉の花として椿を使用する例が江戸初期頃から増え始め、
現在は茶花の主役として茶道とは切り離せない花となっています。
椿の花は救急薬・健康茶、種子は灯火用・外用薬・椿油、堅い材は武器として利用される等、
生活に密着したものでした。
中国では不老長寿・子孫繁栄を表す吉祥文様としても知られています。
鉄線 −鉄線−
鉄線はキンポウゲ科の落葉蔓性草で原産国は中国が知られています。
茎が細くて硬く、鉄線のように強いという事が名称の由来とされています。
葉は対生で葉柄は他物に絡み付き、初夏に大きな白色や淡青紫色の六弁花を開きます。
日本にも江戸時代には中国から伝えられたとされています。
萩 −萩−
萩はマメ科ハギ属の落葉低木です。
夏から秋に多数総状に紅紫色や白色の蝶形花を付けて後に莢を結びます。
語源は古株から新芽が多く萌え出る「生え芽」の説が知られますが、
小豆島等に残るように萩の枝は箒に使われるので「掃き」に由来したとも考えられます。
古くから観賞用として庭園に植えられ、
秋の七草の一つに数えられます。
芭蕉 −芭蕉−
芭蕉はバショウ科の大形多年草で原産国は中国が知られています。
高さ5m内外に達し、葉鞘は互いに相擁して直立しています。
葉は長さ2m近くの長楕円形で長柄を持ち、支脈に沿って裂け易いです。
夏秋に長大な花穂を出し、帯黄色の単性花を段階状に輪生します。
茎・葉は煎じて利尿、水腫、脚気等に服用され、根も薬用とします。
蓮 −蓮−
蓮はスイレン科の多年生水草で原産国はインドが知られています。
葉は円形で長い柄を持って水上に抜き出ます。
夏に白色や紅色等の大きな花を開き、果実や根茎(蓮根)は食用とされます。
花が散った後に花托は蜂の巣状になる事から日本では「蜂巣」と呼んでいましたが、
「はす」に転訛されました。
水芙蓉、芙蓉、不語仙、池見草、水の花等の異称があります。
寺院の池、沼、水田等に栽培され、
仏教では泥水から清浄な美しい花を咲かせる姿が仏の智慧や慈悲の象徴とされています。
五友(菊、蘭、竹、梅、蓮)の一つとしても知られています。
葡萄 −葡萄−
葡萄は夏から秋にかけて見せる豊かな房と大きな緑葉が特徴です。
原産国は西アジアとされ、中国へは漢時代にシルクロードを通じて伝えられました。
日本には奈良時代に中国から伝わり、
沢山の実がなる事から子孫繁栄の吉祥文様として好まれました。
工芸に盛り込まれた葡萄文で特に著名な物は唐より舶載された海獣葡萄鏡です。
蔓や緑葉が力強く繁茂した「葡萄棚」、
栗鼠と組み合わせた「葡萄栗鼠」等も意匠として広く用いられています。
松 −松−
松はマツ科マツ属の常緑高木で原産国は日本や中国が知られています。
北半球の温帯を中心に約1000種が分布しています。
葉は針状で春に球状の雌花と雄花とが付き、黄色い花粉が風に飛びます。
日本には赤松、黒松、五葉松、這松、琉球松、朝鮮五葉等があり、
古来より神霊の憑代とされ、長寿、不変、節操を象徴するものとして尊ばれました。
正月の松飾りや門松等、親しみの深いおめでたい植物です。
果実である松毬は多数の硬い鱗片から成り、「まつぼっくり」とも呼ばれています。
種子は食用、材は薪炭・松明・建築・パルプ等に広く用いられ、松脂も取る事ができます。
三友(松、竹、梅)の一つとしても知られています。
桃 −桃−
桃はバラ科の落葉小高木で原産国は中国が知られています。
四月頃、淡紅や白色の五弁花を開き、果実は大きな球形を呈して美味です。
古くから日本に渡来し、各地で栽培されました。
白桃、水蜜桃、椿桃(油桃)、黄桃、蟠桃、観賞用の花桃等、品種が多いです。
中国では長寿を表すもの、日本では『古事記』に「いざなぎの命」が、
悪鬼を桃で追い払ったという神話があり、悪鬼(邪気)を払う力をもつ霊果とされました。
柳 −柳−
柳はヤナギ科の落葉(一部常緑)高木・低木で原産国は中国が知られています。
中国中南部、揚子江河畔に多いとされ、川柳、行李柳、垂柳等の種類があります。
世界では3300種以上にも達し、寒帯から熱帯まで及びますが、主に北半球に生じています。
日本でも北海道から九州まで分布し、50種類以上を数えます。
古くから庭園樹、街路樹、建築物の添景として植えられ、親しまれてきました。
柳は古来、美人を形容する言葉に用いられる事が多いです。
柳のように細くてしなやかな腰つきを「柳腰」、柳の葉のように細くて美しい眉を「柳眉」、
長くて美しい頭髪を「柳髪」、しなやかな姿を「柳態」と例えています。
山吹 −山吹−
山吹はバラ科の落葉低木です。
一重は山野に自生し、
八重は多く庭園に栽植されます。
春の季語にもなっています。

【人物文様】

唐子 −唐子−
唐子とは中国の子供という意味で中国風の服装や髪形をした童子を指します。
嘗ての中国では多子の男児に恵まれる事は大きな幸福で唐子文様の成立は、
子に恵まれて後継を得たいという願望によるものと考えられています。
寒山拾得 −寒山拾得−
寒山拾得とは寒山と拾得の飄逸な姿を組み合わせた中国・日本画の題材です。
寒山と拾得は唐代の僧で天台山・国清寺に参禅し、
豊干禅師に師事したと伝えられています。
両者とも生没年は未詳で寒山は「文殊菩薩」、拾得は「普賢菩薩」の化身とも称されました。
その挙動はすこぶる奇矯であったとされています。
この画題は宋代以来に好んで取り上げられた為、図様には幾つかの類型を生じました。
寒山が経巻を披き、拾得が箒を持ち、表情に独特の笑みを浮かべる図様が多いです。
禅画の好画題、文芸や芸能の題材ともされました。
猩々 −猩々−
猩々とは中国に由来する想像上の動物です。
朱色の長毛で顔や体は人間に似ており、
声は小児のようで人語を解して酒を好むとされています。
それを題材にした能の演目や大酒飲みを指す事もあります。
西王母 −西王母−
西王母とは中国神話で西方の崑崙山に住する女神の尊称です。
九霊太妙亀山金母・太霊九光亀台金母・瑶池金母・王母娘娘ともいい、
全ての女仙達を統率します。
周の穆王が西に巡狩した時に瑶池で宴を開き、
漢の武帝に降臨して仙桃を与えたと伝えられます。
現在の西王母のイメージは神仙思想の発展と共に仙女化された容姿であり、
元来は人頭獣身の天詞ワ残(疫病と五種刑罰)を司る鬼神でした。
道教成立後に不老不死の仙桃を持つ天界の美しき最高仙女へと変化し、
東方の蓬莱山に住する東王父と対置され、
長寿の神仙として絶大な信仰を集めるに至りました。
大黒天 −大黒天−
大黒天とはヒンドゥー教のシヴァの別名であるマハーカーラ(摩訶迦羅)です。
マハーは「大いなる」、カーラは「暗黒」を意味する事から「大黒天」と称され、
世界を破壊する時に恐ろしい黒い姿で現れます。
日本での大黒天は「大黒」と「大国」の音が通じている事から、
神道の大国主命と神仏習合した日本独自の神を指す場合が多く、
当初は破壊と豊穣の神として信仰されました。
後に豊穣の面が残って七福神の一尊として知られる食物や財福を司る神となりました。
豊干禅師 −豊干禅師−
唐代の豊干禅師は天台山・国清寺に住み、
虎に乗って衆僧を驚かすという奇行で知られていました。
豊干禅師は「釈迦」の化身とも称されました。
拾得は豊干禅師に拾われた事からその名があります。
豊干禅師が虎、弟子の寒山や拾得と共に眠る図は「四睡図」ともいわれ、
禅の境地を示しています。
布袋 −布袋−
布袋は唐末に実在したとされる禅僧です。
杖と大きな布袋を持った太鼓腹の容貌は福々しく、施しを求めて市中を歩きました。
吉凶や天気を占い当てたという逸話も伝えられており、
中国では弥勒の化身、日本では七福神の一尊として信仰されています。
富貴繁栄や幸福の象徴とされており、
所持品の袋は「堪忍袋」ともみなされるようになりました。
その円満の相は水墨画の好画題とされています。
羅漢 −羅漢−
羅漢とは阿羅漢(サンスクリット語「arhat」の主格「arhan」の音写語)の略称です。
元来は釈迦の尊称の一つでありましたが、
後世は主として小乗仏教の最高段階の悟りに達した聖者を指します。
学ぶ事がないという意味で「無学」ともいい、
尊敬や供養を受けるのに値するという意味で「応供」と訳します。

【その他の文様】

梅鉢 −梅鉢−
梅鉢とは五弁の梅花を上から見た形を文様化したもので小円を五つの円が囲んでいます。
中心で接続すると「光琳梅鉢」、
中央の円に萼を付けると加賀藩・前田家の家紋である「加賀梅鉢」となります。
「星梅鉢」、「豊後梅鉢」、「剣梅鉢」等を始めとし、
変形された作例も多く、
裂地、陶磁器、漆器、家紋等の意匠に用いられています。
猿猴捉月 −猿猴捉月−
猿猴捉月とは「猿が水中に映った月を取ろうとして溺死した」という故事から、
身の程をわきまえずに能力以上の事を試みて失敗する事の喩えです。
扇 −扇−
扇には摺り畳めない団扇のグループと摺り畳む事のできる摺扇のグループがあります。
団扇の中でも唐団扇と呼ばれている軍配団扇は武将が兵団を指揮したりする時に用いたり、
相撲節会時に行事が使用する事から力強い勝利の象徴とされ、
文様としての形式を整えていったものと考えられています。
一方、摺扇は中国起源の団扇から派生し、日本独自の発想に基づいて生まれました。
祝賀場には付き物で好んで文様に採用された背景には開いた時の末広がりの優美な形が、
未来の繁栄や上昇に通じる吉祥の象徴として捉えられた為と考えられています。
赤壁賦 −赤壁賦−
赤壁賦とは北宋時代の蘇軾(1036〜1101)が詠んだ代表作です。
赤壁とは湖北省赤壁市の西に位置する赤壁の戦いで有名な古戦場(武赤壁)ですが、
蘇軾が赤壁賦を詠んだのは湖北省黄岡市の赤鼻山(文赤壁)です。
一説には赤鼻山を誤って赤壁と取り違えた為とも伝えられています。
赤壁賦は「前赤壁賦」と「後赤壁賦」の二編から成る詩歌です。
前編は1082年7月16日に赤壁で舟遊びをして自然の悠久さと人間の命の儚さを対比し、
自然の美しさを楽しむ喜びを叙情豊かに表現した名文です。
後編は3ヶ月後に冬の赤壁を再訪して遊びを記したもので、
自然の変化と人間の存在について表現した名文です。
三番叟 −三番叟−
三番叟とは能の「翁(式三番)」で千歳、翁に次いで三番目に出る老人(叟)の舞です。
歌舞伎舞踊では儀式的な性格を持ち、
演目の初めに行われる事から物事の始めや幕開きを意味します。
初春興行、顔見世興行、襲名披露等のおめでたい節目には欠かせません。
三番叟と猿が結びついた事についての通説ははっきりしませんが、
能の前身が猿楽(滑稽な物まねや言葉芸)だった事を考えると、ごく自然な発想とも思われます。
三番叟猿は「難を去り、厄を除くように」という願いも込められているようです。
竜田川 −竜田川−
竜田川とは奈良県の北西部に流れる河川です。
古来より紅葉の名所として知られており、
この竜田川に紅葉が流れている様子を在原業平が詠んだ和歌は有名です。
「竜田揚げ」の名称は揚げた色合いが紅葉のようになる事に由来しています。
鳥獣戯画 −鳥獣戯画−
鳥獣戯画(鳥獣人物戯画絵巻)とは京都市右京区の高山寺を代表する宝物です。
鳥羽僧正(覚猷)の筆と伝えられますが、
確証がない事から作者未詳とされています。
現状は甲・乙・丙・丁の4巻で構成されており、
甲・乙巻は平安時代、丙・丁巻は鎌倉時代の制作と考えられています。
著名な甲巻は擬人化された蛙、兎、猿等が躍動感溢れる自由闊達な筆致で描かれており、
「日本最古の漫画」とも称されています。
壷々 −壷々−
壷々とは三千家家元の替紋として知られる文様意匠です。
京都・伏見稲荷大社に信仰の篤かった元伯宗旦が、
初午の日に境内で売られていた土産物の田宝(伝法)を紋に好み替えたもので、
三千家個々に組み方が異なっています。
田宝とは底が平らで中ほどに膨らみをもった口が狭い土器です。
粗塩を入れて火中に投じて焼塩(精製塩)を作るのに使用されました。
小振りのものは幾つかを掌に入れて転がすと「ツボツボ」という音を発する事から、
壷々とも呼ばれて子供用の玩具とされました。
名称の由来は大阪市此花区伝法町で作られたとする説が知られています。
鶏合 −鶏合−
闘鶏とは雄鶏を闘わせて勝負を競う行事で鶏合ともいいます。
唐の玄宗が乙酉生まれだった為、清明の節に好んで催されました。
日本では中国文化の伝来と共に奈良時代以前から行われていましたが、
平安時代の宮中で春先の陰暦3月3日の行事として流行しました。
平安後期には庶民間にも広く親しまれ、
江戸時代には賭の対象とされる事が多くなった為、
幕府は幾度か禁止令を発し、
明治時代には法的にも禁止されました。
鳴門 −鳴門−
鳴門海峡とは淡路島(兵庫県)と鳴門市孫崎(徳島県)の間にある海峡で、
日本百景にも選定されています。
瀬戸内海と紀伊水道との海水干満により海峡に落差が生まれ、
凄まじい潮流となって豪壮な渦潮(鳴門の渦潮)が発生します。
春と秋の大潮時に最大となり、
百雷の如く凄まじい轟音を立て渦潮が交錯しながら流れていく様子は壮観です。
海松食 −海松食−
海松食はバカガイ科の二枚貝です。
海松貝や海松食貝とも呼ばれます。
内湾の浅い泥底に広く産し、
黒褐色の殻皮を被って後端から太い水管を出します。
水管の先に海松(海藻)が着生し、
それを食べているように見える事から名付けられました。
武蔵野 −武蔵野−
武蔵野とは東京都と埼玉県にまたがる洪積地域です。
武蔵野の意匠は秋の情緒豊かな風情を象徴する題材として有名であり、
「武蔵野は月の入るべき山もなし 草よりいでて草にこそ入れ」と『万葉集』にも詠まれ、
見渡すかぎりの平坦な草叢が広がっていたと考えられています。
月とススキに代表され、
古くから文学、絵画、美術品に表現される日本独自の題材です。
八橋 −八橋−
八橋とは小川や池等の湿地に幅の狭い橋板を折れ折れに継ぎ架けた橋です。
愛知県知立市の東にある逢妻川の南の地名で伊勢物語に杜若の名所として詠まれています。
川の流れが幾筋にも蜘蛛の手のように分かれ、
八つの橋が架けられていた事から名付けられた名称と伝えられています。
その沢の辺りには杜若が咲くとあり、
八橋と杜若が組み合わされて文様が構成されました。

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